第10回AKB48総選挙の結果を見ながら(1)/まずは「本店」と「支店」の関係を整理する
先日(2018年06月16日)、愛知県名古屋市のナゴヤドームで「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」が開催されました。
私自身、AKB48のファンではありませんでしたが、某AKB48Gメンバーのファンコミュニティの業務改善や戦略策定に携わっている身として、実際に現地で観てきました。欅坂46と乃木坂46は割と好きでしたが、AKB48に関しては数年前の「ゴリ押し」イメージが強く敬遠していました。
ただ、今年は初めて現場を訪れた(なお、昨年まではTV中継すら観ていませんでした)ばかりかラップトップPCとiPad Proを現場に持ち込み、徳光和夫さんが開票結果を読み上げると即時にデータ化して、メンバーごとの昨年比や偏差値などを算出していました。ナゴヤドームの観客席でPCを使っている光景というのは端から見ると異様だったことでしょう。
今年のAKB48総選挙 第1位は松井珠理奈さんで、第2位は須田亜香里さん。ともに「名古屋支店」ことSKE48のメンバーということと、開催地が名古屋市、そしてSKE48創設10周年ということもあって「SKE48の躍進」と言うべき結果となりました。
まずは「そもそもAKB48とかSKE48とかなんやねん!」という方に、違いを説明したいと思います。ひとまず組織図を見てみましょう。
非常に色使いが毒々しい図で恐縮です。(一応は各グループ・チームのカラーを反映しています。ただしNMB48の「ヒョウ柄」は再現が難しいため、近しい茶色にしています)
この図で最も意味不明なのは「AKB48(実質)」と「AKB48(名目)」でしょう。GDPならともかく、「実質」とか「名目」とはどういうことなのか、と。
AKB48は「姉妹グループ(名目上は並列関係)」として、全国にSKE48(名古屋・栄)、NMB48(大阪・難波)、HKT48(福岡・博多)、NGT48(新潟)、STU48(瀬戸内)を擁しています。また、組織図には記載していませんがJKT48(ジャカルタ)、TPE48(台北)、BNK48(バンコク)、MML48(マニラ)が既に発足しているほか、MUM48(ムンバイ)、AKB48 Team SH(上海)、SGO48(ホーチミン)が活動開始を予定しています。
それではここで、AKB48最新シングル『Teacher Teacher』の選抜メンバーを見てみましょう。
28名のうち、AKB48のメンバーは半数の14名のみ。残りの14名はAKB48に所属していないメンバーです。AKB48は姉妹グループと並列関係であるはずなのに、姉妹グループから優秀なメンバーを引き抜いて「選抜」を構成しているのです。
もちろん姉妹グループも独自にシングルCDを発売していますが、こちらはそのグループのメンバーのみ(SKE48のシングルならSKE48メンバーのみ)で選抜を編成しています。
ここで組織図の「実質」の意味がお分かりいただけたでしょうか。AKB48のシングルにはAKB48単体だけでなく、姉妹グループから引き抜いたメンバーも参加しているため、実質的に姉妹グループ全体の「プロジェクトチーム」になっているのです。
したがって、AKB48は名目的には「事業会社」として姉妹グループと並列関係にもある一方で、実質的には「持株会社」として姉妹グループを包括しているのです。
そこで、事業会社としての名目上の側面と持株会社としての実質的な側面を区別するため、持株会社としての側面は「AKB48グループ」と称されることもあります。実際にAKB48の公式サイトを見ると、姉妹グループは「AKB48 Group」として表記されています。
それに、今回の総選挙のタイトルも「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」です。第1位の松井珠理奈さんと第2位の須田亜香里さんはともにSKE48、第3位の宮脇咲良さんはHKT48、第4位の荻野由佳さんはNGT48にそれぞれ所属していて、AKB48に所属しているメンバーで最も順位が高いのはAKB48 チーム4とSTU48を兼任している第5位の岡田奈々さんです。しかしそれでも、「AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙」なのです。
これが、SKE48やNMB48といった姉妹グループも「AKB48」として認知されている理由ですね。
そして何より、この現状について岡田奈々さんが「AKB48のシングルの選抜なのに、AKBのメンバーがトップを目指せないのは悔しく感じました」とスピーチで述べたのは、この実質と名目との乖離に起因しているわけです。
並列関係にありながら「上位」かつ「代表的」存在として君臨する。そんなAKB48は東京に拠点を置くこともあり、「本店」とも呼ばれます。一方で地方にある姉妹グループは「支店」。
本店がシングルを発売するときには支店の優秀なメンバーも呼ばれて「プロジェクトチーム」が組まれる。その一方で、支店がシングルを発売するときには支店のプロパーだけが参加します。
また、新たに支店が設立される際には、本店から重役や支店長が来ます。AKB48とNGT48を兼任している柏木由紀さんや、AKB48とSTU48を兼任してSTU48ではキャプテンを務めている岡田奈々さん。まさに「兼務出向」ですね。過去には北原里英さんがAKB48からNGT48に移籍してキャプテンを務めたほか、指原莉乃さんがAKB48からHKT48に移籍して劇場支配人(岡崎充支配人と共同)を務めたり、STU48の劇場支配人を務めたこと(現在は退任)もあったりします。こちらは「転籍出向」ですね。
あるいは支店の優秀なメンバーは、本店のシングル選抜に参加するだけでなく、「兼任」という形で本店メンバーとして活動することもあります。NMB48出身でAKB48も兼任した白間美瑠さんや渋谷凪咲さん。SKE48からAKB48に移籍した木崎ゆりあさん(現在は卒業)。まさに「引き抜き」ですね。
そんなAKB48の複雑な組織構造。並列関係にありながら上位に位置する「本店」ことAKB48と、地方で独自性を発揮しながら活動している「支店」。「出向」よろしく兼任や移籍もあり、さながら企業の組織構造を見ているかのように思えるのは私だけでしょうか。
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