NewsPicks「おっさん」騒動について思うこと(1)/NewsPicksって、こんなメディアだったっけ?

NewsPicksを利用してかれこれ3年。高校3年生の受験を控えた時期にNewsPicksを始めました。

地歴公民の選択科目が「政治経済」で多少は時事ネタを仕入れておきたかったのと、自分自身の語彙力や表現力を高める端緒になれば良いと思ったこと。そして、自分自身が中学生の時から興味関心を抱いてきた「安全保障」や「防衛政策」について、僭越ながら少しでも多くの人に知ってもらえるきっかけを作れれば嬉しいと思ったこと。そんなきっかけでNewsPicksを始めました。


今ではアカデミア会員になったり、ピックレベルがブラックになったり、公式でインタビューを受けたりしていますが、当初はそんな理由でのスタートでした。

まあそんな「自分語り」はどうでも良くて、ちょうどNewsPicksが「おっさん」騒動で話題に上っていたこともあり、思うところあって記事を書いてみました。


端緒を開いたのは日本経済新聞に掲載された広告ですね。

なんとも攻撃的な広告ですが、世の中には「炎上商法」というのもありますから必ずしも否定できるものではありません。


ただね。NewsPicksは基本的に「フリーミアム」モデルで、toC事業では有料会員を獲得できないことには収益化が図れないにも関わらず、潜在顧客のはずのマスに対してケンカを売ってどうするのかと。しかも既存の有料会員は「NewsPicksの大衆紙化」として離れていく。

もっとも、toB事業(広告事業)ではPV数や話題性が高まれば広告収入は増えうるものの、こんな新聞広告で伸びるのは一時的なものでしょう。というか、クライアントにも「おっさん」って相当数が棲息していると考えられるわけで、そこにもケンカを売ってしまっている。

むしろマスからもクライアントからも「うさんくさくて攻撃的なメディア」と認知されるレピュテーションリスクの方が高いんじゃないでしょうか。すると有料会員の新規獲得のハードルも上がるし、今後のPV数や話題性も収益に結びつかなくなってくる。


つまり、toC事業では

・既存顧客のロイヤルティ低下

・レピュテーションによる潜在顧客の縮小

といった可能性があり、toB事業では

・クライアントからの反感

・広告としての(長期的な)性能低下

が考えられるわけです。自ら船体に穴を開けてどうするのよ。


というか、NewsPicksってこんなに「炎上商法」に走るメディアでしたっけ?

3年前の私がNewsPicksに惹かれたのは、黎明期のTwitterのような「アーリーアダプターが野望と情熱を抱きながらコメント欄で議論している」みたいな雰囲気でした。もちろん、NewsPicksのユーザー数が拡大すれば当然に「マス化」は避けられませんし、そこを指向した記事やタイトルになるのも分からなくはありません。

でも、既存のスポーツ新聞や週刊誌のような論調、言ってしまえば「低俗で下品な論調」とは一線を画した、ある程度は知的なメディアとしての路線を歩み続けていたように思えます。もちろんユーザーは「おっぱい」の話題で盛り上がることも多々ありましたが


「特定の人たちに適当なレッテルを一方的に貼ってこき下ろす」ことは明らかに既存のNewsPicksが歩んできた路線とは違う場所に位置するものです。以前、朝日新聞の記者さんから「溜飲を下げる」という言葉を聞いたことがあります。特定の人たちをこき下ろすことで読者の満足度を高めるという手法だそうで、NewsPicksも同じ手に出ているのかもしれません。既存顧客のロイヤルティは下がっているし、潜在顧客からも反感を買っているので誰の「溜飲を下げている」のかは分かりかねますが。

NewsPicksブランドロゴの変更や「サンクスポイント」導入を考えるに、「NewsPicksが生まれ変わろうとしている」のかもしれません。従来の「知的」路線から「低俗」路線にシフトしようとしていて、既存のNewsPicksユーザーから意図的に反感を買うことで彼らを切り捨て、マス化しようとしていると考えることもできます。だから先日の「感謝祭」は実質的に「お別れ会」だったのかもしれません。


もちろん、それは株式会社ニューズピックス(NewsPicksの運営会社)や株式会社ユーザーベース(ニューズピックスの親会社)の経営判断であって、「経済活動の自由」です。だからユーザーは口を出すことはできない一方で、「読まない」という選択肢を常に持ち続けている。有料会員から無料会員になっても良いし、他のメディアに鞍替えしても良い。

でもね。じゃあ誰がNewsPicksを読むねん。だって、先ほど言ったとおり「既存顧客のロイヤルティ低下」と「レピュテーションによる潜在顧客の縮小」の両方を起こしてしまったわけでしょう。既存顧客が「課金しても仕方ない」と考え始めている一方で、潜在顧客には「うさんくさくて攻撃的なメディア」と認知されつつある。日本市場から撤退して米国市場に専念するというなら話は別ですが、それならこんな広告を打たずとも「来月から日本版はストップします」と宣言すれば良い話でしょう。

だから、少なくとも既存顧客を切り捨てたかったわけでもないし、潜在顧客を諦めようとしているわけでもない。もちろん日本市場を捨てるわけでもない。記事のコンセプトは否定できるものではないので、単にタイトルの付け方が攻撃的で一方的で偏見的だっただけでしょう。


この騒動を見ていて思うのは「NewsPicksってこんなメディアだったっけなあ」という諦観です。

あっ、まだ「失望」はしていません。今までの記事は面白いし、「中の人」には素敵な人も多いし、素晴らしい記事を書けるポテンシャルもあるし。

だからこそ、一種の期待も込めて「もう少し良いタイトルの付け方、あったよね」と思ってしまいます。たくさんのメンバーがいるんだから、誰か一人くらい適切なワードを思いつくんじゃないでしょうか。それとも「メディア」を名乗っておきながら語彙力すらないのかと。

NewsPicksって、もう少し知的でユーモアのあるメディアだったんじゃないかと思ってしまいます。そろそろ新しい「住処」を探すべきなのかもしれません。

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